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こけし小噺 第二回 「たこぼうずの息子」
 初春のお慶びを申し上げます。
2010年も、こけしとこけしを愛する皆様に幸あれ。
今年も仙台こけしぼっこをよろしくお願い致します。

★画像1

                                             

さて、久しぶりのこけし小噺でございます。
第一回では、たこぼうずの祖、岩本善吉の生涯についてお話しました。
善吉の破天荒人生をたどればたどるほど、
このような父親を持った、息子芳蔵の存在が私の心を捉えました。
上の写真をご覧くださいませ。
右が善吉、左が芳蔵のたこぼうず。
父善吉を語ることなしに、息子芳蔵を語れず。
私は芳蔵のたこぼうずに、
善吉のものにはない「吹っ切れなさ」を感じます。
たこぼうずという異形のこけしを生み出した父善吉。
その父と同じこけし工人の道を歩んだ、息子芳蔵。
その心中や如何に。


岩本芳蔵は明治45年、栃木県鹿沼にて、
岩本善吉と彼の8番目の妻シゲの次男として、生を受けました。
ちなみに「芳蔵」という名は、呉服業を営んでいた善吉の父から取ったものと思われます。
芳蔵が物心ついた頃には、すでに家業は傾き、
善吉は芸者に踊りを教えて生活していました。
大正11年、芳蔵11歳の時に、善吉は家族を喜多方において、
単身中ノ沢に移り、磯谷茂の山市商店に雇われます。
善吉の生活は相変わらずデタラメで、家族への仕送りもままならず、
喜多方から小学生の芳蔵が生活費を受け取りに来ることも度々あったとか。
翌年、善吉は中ノ沢に家族を呼び寄せ、
芳蔵は、中ノ沢小学校卒業後、こけしを作り始めた善吉を師匠と仰いで、
木地修行を始めます。
芳蔵16歳の時、木地挽きの最中に善吉からウシ(カンナのこと)で頭を殴られ、家出。
一体、何があったのでしょうか・・・。
当時、職人の世界では、技は口で教えるものではなく、
師匠の手を見て盗むもの。
鉄拳制裁は当たり前でした。
しかし、まさかカンナが振ってくるとは芳蔵も思っていなかったのか、
このクソ親父!と飛び出した先は西村屋。
飲んで騒いで遊び尽くし(血は争えませぬ。)、翌朝ふらふら帰宅して、東京へ。
一年間で6軒の木地工場を転々とします。
鈴木庄吉のひょうたん下駄製造のため、
ゆうの原に移りましたが、庄吉の娘と結婚を迫られたため、ふたたび東京へ出奔。
箱根湯元の小川助治郎工場で、1日550個のけん玉を挽いて技を磨き、
翌年、意気揚々と中ノ沢に戻りましたが、
善吉に「絵の具のことを分かっとらん!」と追い返され、小川工場に舞い戻ります。
4年後、ふたたび中ノ沢に戻りますが、
またまた「白い手の木地屋が家の敷居をまたぐことはならん!」と善吉に言われ、
土方や営林署の労夫をして、汗と土にまみれます。
磯谷の工場で雇われますが、磯谷と喧嘩して工場を飛び出し、
やがて善吉に許され、22歳の頃からこけしを作り始めました。

善吉は「人の真似を絶対にしない。」ことを信条に、こけしを作っていましたから、
もちろん息子の芳蔵にも、善吉型を作ることを禁じ、
本人型を追求するように言い聞かせました。
芳蔵の本人型、それがこちらでございます。

★画像2



・・・可愛いらしいじゃありませんか。
胴体の牡丹模様は善吉のたこぼうずを踏襲しているとはいえ、
この純朴な顔は、まったくの別物。
前髪や眉が濃いせいか、全体的にもったりした感じがします。
この「もったり感」。
芳蔵こけしの特徴だと思います。

芳蔵がこけしを作り始めた翌年、昭和9年に、
父善吉が心臓病で亡くなります。56歳。
芳蔵が23歳の時でした。

その後、売れ残った善吉のたこぼうずの始末に困った芳蔵は、
2年後に川口貫一郎が訪ねてくるまで、
ダルマストーブの薪代わりにくべていました。
しんしんと雪の降る中ノ沢で、
ダルマストーブの炎になめられる父のこけしを見つめながら、
芳蔵の胸に去来していた思いは、さぞ複雑だったことでしょう。

しかし、その後善吉のたこぼうずの評価は高まり、
昭和31年、小野洸に請われて、
芳蔵は父に禁じられていた善吉型のこけしを復元します。
戦後は、善吉型のこけし製作に励み、高い評価を得ましたが、
晩年、中風に悩まされ、昭和48年、62歳で世を去ります。


芳蔵の手による善吉型は、確かに善吉のものとそっくりですが、
やはり線が「もったり」しています。
特に表情が善吉のものほど呆けてないと申しますか、
洒脱さに欠けると申しますか、決して悪いことではないのですが、
酔っ払いつつも、終電の時間が気になるサラリーマンのような、
「タクシーどこで捕まえようかなぁ。」と、頭の隅で考えている顔です。
芳蔵は、たこぼうずの顔を描きながら、
きっとどこかで、「親父が見たら、怒るだろうなぁ。」と考えていたに違いありません。
いつの間にか作らなくなった自分自身のこけしのことが、
頭をかすめることもあったでしょう。

しかし、芳蔵が善吉型を復元し、弟子を育てたことによって、
たこぼうずはこけし界で特異な一ジャンルを築くことになりました。
あの世で善吉は「この馬鹿野郎!」と青筋を立てていることでしょうし、
芳蔵は今度はどこへ出奔するか、頭を悩ませていることでしょう。


                                               著 猫空

★画像1 『こけし 美と系譜』鹿間時夫・中屋惣舜著(社会思想社1966年刊)
★画像2 西田記念館より頂戴しました。

★参考文献
 『こけし辞典』鹿間時夫・中屋惣舜編(東京堂出版1971年刊)
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